<b>和歌山県太地町沖で2006年に捕獲された腹びれを持つバンドウイルカについて、東京海洋大学などでつくる研究プロジェクトチームによる調査で、四足歩行をしていた陸上哺乳類の名残とみられる骨格が腹びれの中にあることが分かった。27日に米国フロリダ州で開かれる国際海産哺乳類学会で発表される。
腹びれのあるバンドウイルカは06年10月に追い込み漁で捕獲された。雌で、「はるか」と名付けられ、太地町の町立くじらの博物館で飼育されている。現在、推定15歳で、体長約3メートル。
調査は四つのグループに分けて続けられている。体の構造を研究する「形態研究グループ」が昨年11月、腹びれをエックス線で調べたところ、関節や指とみられる骨が左右に計21本あることが確認された。
鯨類の祖先はカバのような陸上哺乳類とされ、海で生活することで後ろ足が退化した。それは化石でしか分からなかったが、未知の領域でもあったその過程の一部が分かったという。チームを総括する東京海洋大学の加藤秀弘教授は「最初は皮膚の一部が変化してできた可能性もあると思っていたが、今回の調査結果から考えると後ろ足の名残だとみられ、世界的な発見だ。今後、突然変異かどうかなどを遺伝子でも調べていきたい」と話した。
博物館の桐畑哲雄副館長は「今後の研究のためにも、子どもを産ませることができればと思う」と話した。
【腹びれを持つバンドウイルカの「はるか」(和歌山県太地町で)=くじらの博物館提供
紀伊民報より</b>
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クジラの種類 後脚の痕跡の形 発見場所 報告年
ヒレナガゴンドウ ひれ状 オランダ(座礁) 1594
ザトウクジラ 棒状突起(長さ120cm) カナダ(捕獲) 1919
マイルカ ひれ状 ソ連(捕獲) 1940
マッコウクジラ 椀状突起 三陸海岸(捕獲) 1956
マッコウクジラ 乳頭状突起 北洋(捕獲) 1956
マッコウクジラ 棒状突起 ソ連(捕獲) 1959
マッコウクジラ 棒状突起 ソ連(捕獲) 1962
スジイルカ いぼ状(高さ13mm) 伊豆半島(捕獲) 1963</b>