アップル、日本が思わぬ「金鉱」に
ウォール・ストリート・ジャーナル 11月11日(月)18時27分配信
米アップルは思わぬ場所で金鉱を掘り当てた。日本だ。
過去2年間で、日本はアップルにとって最も急成長を遂げる地域に浮上した。
その成長ペースは本国の米国や好況に沸く大中華圏、アジアのその他地域を大きく上回っている。
日本はアップルが最大の利益率を収めている市場であり、
2013年9月期に営業利益が拡大した5地域のうちの1つだ。
たいていの企業が日本を成長市場とみなさないことを踏まえると、これは予想外だ。
日本は20年にわたり景気低迷にあえぎ、人口減少や高齢化問題にも直面している。
さらに、家電に強い日本企業が海外同業を数十年にわたり抑えてきた。
宣伝への重点投資や通信会社の気前のよい販売奨励金を追い風に、
スマートフォンの「iPhone(アイフォーン)」がアップルの日本での成功の推進力となった。
日本の消費者がかつてルイヴィトンのバッグやバーバリーのマフラーに殺到したように、
iPhoneも日本人のブランド熱に乗じた。
BCNのアナリスト、
森英二氏(在東京)は
「ここでのアップルのブランド力には圧倒的なものがある」とし
「仕様や合理性よりもアイフォーンを保有すること自体が重要になっている」。
9月には契約者数6180万人を擁する日本の携帯電話サービス最大手
NTTドコモが取り扱いを開始したことでiPhoneの販売に弾みがついた。
東京のMM総研によると、今年4~9月のiPhoneの日本シェアは37%と、
NTTドコモの参入前でも既に日本で最も売れているスマートフォンだった。
一方、カンター・ワールドパネル・コムテックによると、
7‐9月期の米国におけるiPhoneのシェアは36%だった。
MM総研によると、アップルのタブレット型端末「iPad(アイパッド)」は、
13年3月期の日本タブレット市場でシェアが50%を超えた。
日本の主要通信会社で最後にiPhoneに参入したNTTドコモは、
他社の契約者を奪おうと新機種を積極的に値引きしているほか、
既存契約者にはiPhoneへの機種変更に奨励金を出している。
東京のドコモショップで先週、iPhoneを選んだカサイ・ミカさん(36)は
「(シャープの)アクオスの携帯電話を持っているが、
いつかiPhoneを試してみたいと思っていた」と話した。
カサイさんはソニーのスマートフォンも検討したが、
4週間待ちにもかかわらずゴールドの「iPhone 5s」を選んだ。
ドコモのiPhone参入に対抗しようと、
日本の携帯電話サービス業界2位であるKDDI、
同3位のソフトバンクはそれぞれ独自のiPhone値引き販売を打ち出した。
この3社は今やiPhone 5sの標準モデルを前金なしで販売している。
カウエン・アンド・カンパニーのアナリスト、ティモシー・アルクーリ氏は、
今年の日本でのiPhone販売台数が1100万~1200万台と、
昨年の推計500万~600万台のほぼ2倍になると予想した。
また、来年はこの数字が約2000万台に伸びるとみている。
世界全体でのiPhone販売台数の伸びは今年が16%、
来年が10%になると、
同氏は予測している。
アルクーリ氏は、日本では「(iPhoneは)来年、市場シェアが50%近くになる」と話した。
ストラテジー・アナリティクスによると、
今年1‐3月期に日本は中国、
米国、インドに次いで世界4位のスマートフォン市場だった。
MM総研によると、日本の9月末時点のスマートフォン契約者数は5015万人。
iPhoneの日本でのヒットの背後にある2つの要素は所得水準の高さと、
通信会社が端末代金を一部負担しながら複数年契約と共に販売する「ポストペイド」(料金後納)市場である米国との類似性だ。
サンフォード・バーンスタインのアナリスト、トニ・サコナギ氏は
「米国と日本はその意味で独特だ」と語った。
大半の消費者が端末代金を前払いする市場では、iPhoneの価格の高さが販売に水を差している。
世界最大のスマートフォン市場である中国では、
iPhoneの最新機種である「iPhone5c」と「5s」の価格は、
より大型の同国製端末の2倍程度だ。
調査会社カナリスによると、アップルの7‐9月期の中国スマートフォン市場シェアは5位だった。
アップルは中国の携帯電話サービス最大手、
中国移動(チャイナモバイル)のネットワークでiPhoneが展開されるようになれば、
さらに勢いを加速できそうだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は9月に、
アップルが中国移動にiPhoneを出荷する準備を進めていると報じた。
調査会社IDCによると、
インドではスマートフォンの3分の2が200ドル以下で販売されており、
アップルの市場シェアは5%に満たない。
同国の携帯電話サービス3位、
リライアンス・コミュニケーションズは今月、
iPhoneの2年契約に加入すると端末代金の一部を負担するインド初の通信会社になると
明らかにした。
日本の独自性の1つは、
世界最大のスマートフォンメーカーである韓国・サムスン電子の存在感が比較的薄いことだ。
サムスン電子の日本のスマートフォン市場シェアは
アップル、
ソニー、
シャープに次いで4位。
日本では消費者が先入観により韓国ブランドを敬遠しがちだ。
アップルは日本の総合電機メーカーの苦境にも乗じている。
日本電気(NEC)は今年、スマートフォン事業から撤退した。
パナソニックは9月に、個人向けのスマートフォンの製造を打ち切る計画を発表した。
アップルの13年9月期(9月28日まで)の日本での売上高は135億ドルと、27%増加した。
同じ期間の増収率は中国が12.8%、それ以外のアジア太平洋が4.1%だった。
米ドル換算で売り上げを目減りさせる円安が増収の足かせになった。
日本での12年通期の増収率は94%と、そのほかの地域をしのいだ。
アップルの日本での営業利益率は50%超と、そのほかの世界の35%を上回っている。